CO_2ガスを導入した水産物のガス置換包装を想定し、水産食品衛生おいて特に重要なボツリヌスE型菌危害予測のための基礎知見が得ることを目的した。本研究ではCO_2ガスによる胞子の発芽および栄養細胞の増殖に及ぼす影響について、in vitroアプローチにより個別に解析を行い、本菌の発育生理に及ぼすCO_2ガスの影響を検討した。具体的研究成果は以下のとうりである。 ボツリヌスE型菌(岩内株、国立予防衛生研究所より分与)について、ヒートショックと増菌培養の組み合わせによる高率胞子形成条件を検討した後、胞子液を調製し、各種CO_2濃度でヘッドスペース封入した胞子発芽評価培地中における胞子の初期発芽に及ぼすCO_2ガス濃度を検討した。経時的な発芽率の測定は、発芽後増殖したコロニー数により求めた。一方、胞子液を寒天培地に塗沫し、CO_2ガス包装した後、経時的に栄養細胞増殖をパウチ計測法により計測し、実際の食品を想定した固体表面系での胞子発芽及びその後の栄養細胞の増殖を解析した。 すべての培養温度において、CO_2ガスにより胞子発芽が促進され、特に濃度が20%で最も促進された。しかし、その後の栄養細胞の増殖はN_2100%に比べてCO_2濃度が高くなるほど抑制された。また、栄養細胞に及ぼすCO_2ガスの影響は温度によって変化し、低温下では増殖および出現コロニー数が著しく抑制された。以上の結果から、CO_2下におけるボツリヌス菌の挙動は胞子発芽促進と栄養細胞抑制という相反する効果が複合して決定されると推測された。 以上の成果は平成9年度当初の計画をほぼ達成したと考えている。
|