研究概要 |
本研究の内容は「アユ筋肉コラゲナーゼのコラーゲンに対する作用機構の解明」と「これらの酵素の産卵期特異的な活性発現機構の解明」とに大別されるが、ともに精製した酵素標品を必要とすることから、本研究の成否は精製にかかっている。そこで今年度は、滋賀県水産試験場で養殖された成長期および産卵期のアユ筋肉から、DEAE-セルロースあるいはCM-セルロースを用いたイオン交換クロマトグラフィーとこれらに引き続くアユI型コラーゲンを用いたゼラチンアフィニティークロマトグラフィーにより酵素の精製を試みた。活性測定は、ウシゼラチンを用いたゼラチンザイモグラフィーによった。 その結果、DEAE-セルロース吸着画分については成長期と産卵期とでは活性の溶出パターンに違いは認められなかった。しかし、CM-セルロース吸着画分には産卵期筋肉においてのみ約70kDaの活性が検出された。この活性はロイペプチンと1,10-フェナントロリンで阻害されたことから、等しい分子量を持つセリン型とメタロ型のプロテアーゼが、CM-セルロースクロマトグラフィーにおいて同一の挙動を示したものと推測された。そこで、この画分をアゼラチンアフィニティークロマトグラフィーに供したところ、非吸着画分に70kDaのセリン型の活性が、一方、吸着画分に68kDaと62kDaのメタロ型の活性が検出された。この結果は、先に、報告した産卵期のアユ筋肉に誘導される60-70kDaの活性は、ゼラチン親和性の異なるセリン型とメタロ型のプロテアーゼから構成されていることを示唆するものであった。 また一方、産卵期におけるコラーゲン分解産物を同定するため、1型コラーゲンに対するポリクローナル抗体を作製した。従来、ペプシン処理により調製したコラーゲンは抗原性が弱いことが指摘されていたが、今回はペプシン処理を行わず、テロペプチドを含むコラーゲンを抗原として用いたことにより、力値の高い抗体を作製することに成功した。
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