代表者らは先にコイを実験魚として用い、補体の中心成分であるC3タンパク質には電気泳動移動度の異なる4種の変異体が存在すること、これらの変異体間で溶血活性に最大で約4倍の違いがあることを観察した。さらに代表者らは、現在までにコイC3をコードする3種類のcDNAをクローニングし、哺乳類とは異なりコイには複数のC3遺伝子座が存在することを明らかにした。本年度は、コイC3アイソタイプのcDNAクローニングと、ジェノミックサザンブロッティングによる各アイソタイプ遺伝子の検出を試みた。その結果、C3をコードする8種のcDNA断片をPCRによって単離した。注目すべきことに、その中には、C3の異物への結合反応を触媒するHis残基がSerやGlnに置換した配列を持つもの(C3S、C3Q1、C3Q2)が発見された。そこで、これら変異C3のうち、C3SとC3Q2の全1次構造を明らかにするために、cDNAライブラリーからのクローニングを行った。C3SについてはC3α鎖のチオエステル部位から約100アミノ酸残基をコードするcDNA断片を、またC3Q2についてはC3β鎖のC末端付近からα鎖の中央付近までに相当するcDNA断片をそれぞれプローブとして用い、肝膵臓cDNAライブラリーをスクリーニングした。C3Sについては、β鎖のN末端から約340アミノ酸残基を除く全領域をコードする塩基配列が得られた。C3Q2は、948アミノ酸残基をコードする翻訳領域を含んでいたが、β鎖の中央付近約330残基とα鎖のN末端から約80残基を欠損していること、およびチオエステルを形成するCysがSerに置換していることが判明した。また、ジェノミックサザンブロッティングにおいて、C3S、C3Q2に特異的なバンドを検出することができた。
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