研究概要 |
塩辛,魚醤油を始めとする水産発酵食品のエキス成分組成を明らかにし,これらの強いうま味の本質を探ることを目的に,本年度は以下の検討を行った. 1. マイワシおよびスルメイカを原料として,10および20%食塩で魚醤油を調製し,熟成中のエキス成分の変動を調べた.10%イカ魚醤油でのみ長期間の生菌数の増加とpHの上昇が顕著で,10%イワシ魚醤油では一過性の上昇のみが観察された.20%では生菌数,pH共に熟成に伴って低下した.遊離アミノ酸はいずれも熟成に伴って増加し,熟成終了時には市販魚醤油と同程度に達した.従って,20%食塩の場合はほとんど筋肉および内蔵プロテアーゼの作用によるものと考えられた.ヌクレオシド・塩基では熟成1ヶ月でいずれの魚醤油でもヒポキサンチン等の増加が認められ,その後やや減少した.イワシ魚醤油の多量のクレアチンは熟成中に約半分がクレアチニンに変換された.以上の結果,市販魚醤油の主なエキス成分の熟成中の生成過程が明らかになった 2. 典型的なベトナム産魚醤油のエキス成分組成に従って合成エキスを調製し,官能試験を行った.合成エキスは元の魚醤油と比べてやや劣るものの,強いうま味を呈した.オミッションテストによりグルタミン酸を除いたエキスはうま味が低下し,明らかに主要なうま味成分であったが,グルタミン酸除去合成エキスにもまだ強いうま味が残存しており,他の成分の役割が注目された. 3. ベトナム産魚醤油から各種クロマトグラフィによりペプチドを分画したところ,分子量500以上のペプチド画分はこく味,うま味を呈し,ペプチドの寄与が予測された.
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