【研究目的】ヤマトシジミの生体成分が生息環境の湖水塩分濃度の変動にいかに対応するか、また季節変動するかについて周年にわたり調べた。雌雄の生体成分の差異についても調べた。 【研究方法】1.試料:島根県宍道湖の玉湯地区において手掻きで漁獲されたヤマトシジミを、保令状態で搬送、翌日試料とした。2.分析項目:生息地区低層部および体液の塩分濃度、体液のNa、可食率、軟体部の水分、総窒素、粗脂肪、グリコーゲン、エキス成分(エキス窒素、遊離アミノ酸)を測定した。 【研究成果】1.一般成分の季節変動:タンパク質、粗脂肪の季節変動は少ない。水分含量は、冬期から初夏に低く産卵期後期に高かった。また、グリコーゲンは季節変動が大きく、2月から6月に高く、8月から10月に低くなり、水分と負の相関が、可食率と正の相関が認められた。2.エキス成分(エキス窒素、遊離アミノ酸)、体液塩分濃度、体液Na濃度の季節変動は認められなかった。3.湖水塩分とヤマトシジミ生体成分:湖水塩分と粗脂肪間に負の相関(5%の危険率)が認められたが他の成分との相関はなかった。一方エキス成分(エキス窒素、遊離アミノ酸総量、グルタミン酸、プロリン、グリシン、アラニン、β-アラニン)体液塩分濃度、体液Na濃度は、湖水塩分濃度と強い正の相関が認められた。4.雌雄生体成分の比較:タンパク質と粗脂肪に有意な差があったが、遊離アミノ酸、体液塩分、体液Naには有意な差はなかった。5.グリコーゲン含量の高い2月頃から6月頃が美味な時期と推定した。
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