本研究の課題は、わが国の有機農産物・食品の基準・認証制度を、基準・認証制度の先進国・アメリカとの比較を念頭に置きながら、実証的に検討することである。課題に則し、本年度、まず第一にアメリカの「オ-ガニック食品生産法」条文、コ-デックス食品表示部会資料等、関連文献の収集を行うとともに、その分析を行った。「オ-ガニック食品生産法」条文等によれば、アメリカにおけるオ-ガニック食品(わが国では有機農産物・食品とするのが一般的)の認証には、生産過程がオ-ガニック(過去3年間、無化学肥料・無化学農薬栽培)であるだけではなく、輸送や卸・小売過程で一般農法生産物と一切混合しない措置を講ずることが不可欠の条件にされており、条文には違反者対する厳しい罰則規定も含まれている。また、コ-デックスでも、アメリカ基準とほぼ同様の基準が食品部会に提示・論議されており、早晩、それが国際基準になっていくものと推察される。 第二に、農水省・関連地方自治体・民間関連団体の基準・認証制度の諸資料を収集するとともに、一定の聞き取り調査を行った。わが国の有機農産物の基準は、各団体によりまちまちな面が強く、必ずしも過去3年間、無化学肥料・無化学農薬栽培が条件とはされていない。また、輸送や卸・小売過程まで規定しているものは、これまでの調査の限りでは皆無であり、厳しい罰則規定をもっているものも見あたらなかった。それがいかなる要因によるものかの解明が、次年度以降の一つの課題となろう。しかし、有機農産物の基準を明確化し、認証制度を制定していこうとする動きは活発で、農水省を始め地方公共団体・民間関連団体等でそれへ向けての具体的動きが始動しつつある。
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