本研究の課題は、我が国の有機農産物・食品の基準・認証制度を、その先進国・アメリカとの比較を念頭に置きながら、実証的に検討することにあった。第一年度には、検討の基準とすべきアメリカの「オーガニック食品生産法」やコーデックス規格等に関する文献収集と分析を行い、第二年度にその成果の上に立ち、都道府県・市町村及び有機農産物・食品の民間認証団体の基準・認証の仕組み、あるいは認証実績等に関する資料収集と聞き取り調査を行った。第三年度は補足的調査と取り纏めを行った。三年度の研究で明らかになったことは、第一に有機農産物・食品の市場規模が近年急拡大し、流通形態も閉鎖的な「生消提携型」「有機農産物専門事業体型」からオープンな「一般市場型」に次第に転換してきていること、第二に、それに歩調を合わせながら基準・認証制度を制定する地方自治体・民間諸団体が増加し、認証を受けた有機農産物が市場に出回ってきたことである。ただし、各団体間で認証基準等が微妙に異なっている点は見落とせない。第三に、しかし、その認証は必ずしもアメリカの認証基準やコーデックスの国際基準に沿ったものではなく、いわゆる「特別栽培農産物」に重点がおかれたものであることである。そして第四に認証も生産=圃場レベルに止まり、流通諸過程での諸措置-流通諸過程で一切一般農産物と混在しないための諸措置など-まで厳格に規定・確認するものが、殆ど無いことである。わが国の風土的条件が欧米と大きく異なることは周知であるが、三年度の研究結果は欧米やコーデックス型の基準・認証制度とは異なる「日本型」のそれを創造的に構築していく必要のあることを示唆しているものと考えられる。
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