研究概要 |
今年度は大豆先物市場の分析を行った。国内の大豆先物はIOM大豆が標準品であるから,シカゴの先物市場の影響が国内の先物市場を経由して,現物の食品用大豆市場に及ぶルートが分析の大きなポイントとなる。この分析にあたって,大豆供給安定協会のご好意により,IOM大豆の現物日別価格を入手できたことは極めて有用であった。 シカゴにおける大豆の期近価格は在庫水準や生産条件に反応して変動するが,それは東京におけるIOM大豆相場の各限月にも強い影響を及ぼしている。しかしよくみると,東京では期近価格は期先価格とは異なった動きをみせている。また,東京では手仕舞が差金決済ではなく,現物の受け渡しで行われることが多い。これは,期近で投機的行動が頻繁に行われており,その結果が期近価格特有の動きや現物の受け渡しとなって現れていると考えられる。本研究ではこの点を計量分析によって実証した。 食品用大豆市場は,近年バラエティ大豆のシェアが急激に高まっているが,それでもなお8割程度はIOM大豆である。IOM大豆の現物価格の変動要因は,一つはシカゴ相場であるが,もう一つの要因は国内の期近相場における投機的行動である。食品用大豆の流通ルートにおいて,穀物取引所の受け渡し品が主要な役割を果たしている点は重要である。国産大豆がいかに変動しようと,IOM大豆の価格はこれまでそれに対応した変化を示してこなかった。国産大豆が不足すれば代替的需要が増大して,IOM大豆の価格は上昇すると考えられがちであるが,実際はそうではない。IOM大豆は常に供給過剰の状態にあり,そのような需要が発生したとしても,IOM大豆価格は変動しないのである。 IOM大豆の供給構造の分析は次年度の課題としたい。
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