研究概要 |
本研究は,平成9年度から平成11年度までの3年計画で実施される.2年度目である平成10年度は,初年度に設定したフレームワークに基づく分析を進めると共に,新たな分析に取り組んだ. POSデータを用いたブランドレベルでの需要分析を,Almost Ideal Demand Systemにより行った.この結果は,現在,『農業経済研究』に投稿中である.これは,昨年度から継続して研究を進めている分析方法である.データはアメリカのマーガリンのPOSデータである.主な分析結果は以下の通りである.(1)ブランドレベルでの価格弾力性は,通常,食品の価格弾力性として想定される値よりもかなり大きい.(2)プライベートブランドは,特異なマーケットポジションを占めている.(3)大型の寡占メーカーの製品についての計測結果は,マーケットセグメンテーション戦略が取られていることを示唆している. また,今年度から取り組んだ分析は,やはりブランドレベルでの需要分析であるが,商品の特性に注目し,その特性の価値を推計するヘドニック・アプローチによる分析である.データは,近年,消費が伸びている商品であり,しかも全農やいくつかの単位農協も参入している無菌包装飯米のPOSデータである.なお,この結果は,近日中に『フードシステム研究』へ投稿する,主な分析結果は以下の通りである. (1)店舖特性については,店舗についての規模の経済が働いており,大規模な店舗ほど価格が低下している.(2)時期特性については,無菌包装飯米の売れ行きが伸びる第3四半期に価格上昇が見られる.(3)パッケージの特性については,「新潟産」「魚沼産」などの表示がある方が,価格が高い.(4)同じくパッケージの特性については,製造メーカー名が大きく明記されている方が,価格が高い.(5)この分析結果は,新商品投入の際のプライスシミュレータとして利用できる.
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