研究概要 |
平成10年度は主として以下の研究を行った。第1に、農水省の第3次土地基盤整備調査の結果を詳細に分析した。そこでは市町村単位に入力されているデータを県レベル、地方レベルにまで再集計した。その結果、緩傾斜で区画整備がなされている「相対的優良地」の中山間地域における比率を析出し高齢単一世代との関係をみた。その結果、近畿、東海、北陸、そして北海道は中山間地域においても相対的優良地の比率が大であるが、高齢単一世代化が進行しており、資源的に価値の高い当該地の保全問題が浮上することがわかった。 第2に、こうした範疇の典型地域として新潟県清里村を選定しそこでの担い手再建および資源管理対策として、農業公社によるインキュベーション問題を分析した。(財)清里村農業担い手公社の平成10年春におけるインキュベーションの実績をトレースし、そこでの多様なインキュベーションコストを分析した。とくに大きなそれとして、独立者に農地を「株分け」転貸する際に生ずる「団地的農地転貸コスト」を分析した。10a当たり当該コストを推計するために,生産費調査と第3次土地基盤整備調査結果から、規模と土地条件とを説明変数とする評価式を作り、清里村での上記コストを推計した結果、10a当たり7360円であることがわかった。その結果、当該コストは最低250万円に達することがわかった。その他、熟練オペレータの転出にともなう新人オペレータの教育コストなども定性的にではあるが分析した。こうしたインキュベーションコストは、第三セクター(公社)に対する公的支援の根拠となりうるであろう。 第3に、清里村におけるインキュベーションがたんなる「一匹狼」としての個別担い手を生みだすのではなく、出身集落に根をおろし集落農業維持に資するものであることを分析した。具体的には独立者が集落の営農組織とリンクするかたちで展開していることをさす。こうしたなかで「還元型インキュベーション」の意義を提起した。
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