1997年度は、SNA産業連関表を用いて、日本における食品流通経路の短縮化が分析された。その結果、多くの市場で1995年から1996年にかけて流通経路の短縮化が生じた事が明らかとなった。輸入品との競合が激化する中でもっと前の時期からその傾向が見られたものもあるが、1995年以降の流通経路の短縮化はほぼ共通した現象である。大店法改正に象徴される流通制度の改革は流通革命に影響をもたらしたと言える。 1998年度は同様の研究をアメリカについて行った。ただし、利用可能なSNA産業連関表の制約から、商業マージンの推計は1985年と1987年のみ行い、以下の事柄が明らかになった。(1)牧畜畜産は0.087から0.079へと低下した。(2)他の農産物は0.069から0.058へと低下した。(3)食料品は0.027から0.031へと低下した。 1999年度は日本とアメリカの比較と行った。同一の部門分類が必要なため、データとしては国際産業連関表が再集計され、二つの産業連関表が作成され用いられた。生鮮度合いの重視される食品(農業)の流通コストについては、水準と傾向の両面において、日本の「優位性」が明らかとなった。これは生鮮野菜などが「大量買付けによる仕入コストの削減」という手法と馴染みにくい性質(傷みやすい、品質のバラツキが大きい、産地の散らばりが大きい、等)を持っているためと考えられる。より加工度の高い食料品の流通コストについては、アメリカにおける減少傾向が強く、1995年には日本とほぼ等しい水準にまで低下した。これは加工度が高くなると「大量買付けによる仕入コストの削減」という手法がより有効になるためと思われる。 わが国でも大店法改正・廃止などの既成緩和が進展しているとは言え、より一層の改善が必要であろう。特に、外食化と中食化の進展を考慮すると、加工度の高い食品に対する需要は今後も増加が見込まれるので、この分野の流通に関するより詳細な検討(例えば、規制緩和の事後評価分析など)がより重要になると思われる。
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