本研究の課題は、広域合併農協の事業・組織・経営がその当初の目的を達成しているかどうかを究明するとともに、現代ならびに近未来の経済社会に適合した協同組合を構築するためには広域合併農協にいま何が求められているかを明らかにすることである。この課題への接近にあたって、われわれが用意した理論モデルは「自己組織性」という社会理論である。 研究実績は研究成果報告書で公表しているが、要約すると、(1)自己組織性の理論的展開を図るとともに、その考え方を農協問題に適用するという作業を行なった。(2)農協問題への適用に当たって、現実問題に即して農協の自己組織性(自己言及)のあり方を検討した。(3)実際の農協職員(管理職)に支店機能の再構築のテーマで作文コンクールを行ない、その中の最優秀作品を収録した。(4)農協信用事業について、事業利用者の利用行動から見た事業再構築のあり方を自己組織性の援用によって検討した。(5)生産資材の物流問題について、農協の取り組みの現状とモダンの社会に適合した事業方式のあり方を実証的に検討した。(6)広域合併農協の組織再編の方向性について、三重県を事例的にとり上げ、そこでの農協関係者による自己言及の実現可能性を検討した。 深めるべき点は末だ数多く残されているが、今回の研究によって、自己組織性の理論的検討のみならず、適用可能性がこれまで以上に広がったことは高く評価されて然るべきであろう。パイオニアリング・ワークとして一定の成果は残せたと考えている。
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