多様な果実の輸入自由化と関税率の持続的な切り下げ、および消費者の需要構.造の変化によって、みかんに対する需要は130万トン段階まで落ち込み、価格の低迷が続き、柑橘部門の採算性が悪化し、栽培者の老齢化が進み、中山間地域では園地の荒廃が深刻な環境破壊問題となっている。 柑橘産業のこのような窮状に対応して再興戦略を構築するために、現に先進的経営・産地で採択されている多様な経営革新を実証的に分析した。 (1)生産要素調達革新では、緩傾斜園地の造成、SSが通れる程度の作業道の整備、かん排水施設の整備、区画整理と団地化が重要。(2)経営要素構造革新では、園地の所有・利用権を中核農家に移し、最適園地規模まで拡大する必要がある。(3)経営部門組織革新では、従来の早生、普通に極早生、中晩柑を組み合わせて出荷時期を長期化する。また産地によっては畜産・園芸部門を組み合わせて経営部門の複合化を図る。(4)栽培技術革新では、高糖度品種の導入、低農薬・有機栽培による安全・安心・美味な果実の生産、深耕・堆肥増投入・客土による地力の増強、適切な摘らい・摘果による隔年結果の抑制が必要である。(5)作業技術革新では、SSなどの作業機械を完全操業度でもって活用すること不可欠である。(6)マーケティング革新としては、高糖度・安全・周年消費・中大玉需要に応える。量販店中心の市場需要に対しては、大量、継続的・計画的に市場に出荷できるように共選・共販体制を強化する。同時に消費者との直接的な交流を促進し、多品目・少量果実の直販方式を工夫する。(7)経営管理技術革新では、多様な革新に関する情報を集め、パソコン簿記・分析方式を導入して、経営の計数管理を徹底する。(8)共同組織革新では、集落段階から農協段階に至る活力のみなぎった共同組織を結成することが不可欠である。特に全国的な産地間協調でもってみかんの生産調整を行い、125万トンという総供給量制限を厳守することに成功しなければならない。
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