今年度は、第一に、Naモンモリロナイト分散系が流動するときに、粒子同志が衝突して生じる流体力学的相互作用と粒子形状の関係について詳細に検討した。懸濁液の粘性率を精密に測定し、Huggins型の粘度式を用いて体積濃度と粘度の関係を解析してHuggins係数を求めた結果、モンモリロナイトの値は1.14であった。一方、溶液中で自在に形状が変化する高分子では、粒子と溶媒がなじみやすい場合、Huggins係数は0.2となり、逆に溶媒と粒子がなじみにくい場合、Huggins係数は2.0程度になる。これに対して、剛体球の流体力学的相互作用は理論的に解析されており、Huggins係数は1.0になることがわかっている。これらの結果から、厚さが1nmで広がりが22nmの、非常に薄い板状粒子であるモンモリロナイトの流体力学的相互作用は、剛体球とほぼ同じようなメカニズムで生じていることが推定された。次に、回転型粘度計を用いてNaモンモリロナイト分散系の粘弾性特性を調べた。著者が提案した粘弾性モデルに基づいてコンシステンシー曲線を解析し、ズリ弾性率、ズリ粘性率、応力緩和時間を求め、それらの塩濃度依存性について検討した。その結果、塩濃度の低下にともなって懸濁液のズリ弾性率、ズリ粘性率はともに大きく増加し、ズリ粘性率をズリ弾性率で除した応力緩和時間も顕著に増加することがわかった。以上のことから、分散領域において、塩濃度は懸濁液の力学的性質を変化させる働きがあり、応力緩和時間のデータから、Naモンモリロナイト分散系は塩濃度の低下にともなって、より固体的な変形挙動を示すことがわかった。
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