本研究では、粒子間相互作用力として反発力が卓越した分散領域において、拡散二重層の厚さや粒子間力の大きさが流体力学的相互作用、及び定常流動下における粘弾性的性質にどのように依存するかを定量的に明らかにした。得られた主な成果は、以下の通りである。 モンモリロナイト分散系において、二粒子の衝突によって生じる流体力学的相互作用は、電気拡散二重層の厚さの影響を受け、拡散二重層が厚くなるにつれて相互作用も強くなることがわかった。すなわち、モンモリロナイト懸濁液の流動特性は、粒子間反発力の大きさに影響され、塩濃度の低下にともなう粒子間相互作用の増加は第二電気粘性効果に起因することが明らかになった。 Maxwellモデルを用いて各々塩濃度に対する懸濁液の流動曲線を解析することによって、ニュートン粘性率だけでなく、ズリ弾性率や応力緩和時間も定量的に求めることができた。その結果、これらのレオロジー定数は、塩農度の低下にともなって大きくなることがわかった。この事実は、粒子の構造変化が起こらない分散系の流動特性が、粒子間反発力による影響を強く受けることを示唆している。 DLVO理論に基づく粒子間反発力の計算にはどの近似式を用いるのが妥当かを検討するため、懸濁状態における粒子の配列構造を詳細に調べた。その結果、体積分率0.011の試料濃度では、モンモリロナイト粒子は並行に配列しており、粒子間反発力の近似式としては、平板モデルを用いることが適切であることがわかった。 最後に、各々塩農度に対して計算された反発力とズリ粘性率、ズリ弾性率及び応力緩和時間の関係を調べた結果、粒子間反発力が増加するにつれて分散したモンモリロナイト懸濁液はより固体的性質へと変化することが明らかとなった。さらに、これらのレオロジー定数は反発力に比例して増加することから、モンモリロナイト分散系の粘弾性的性質と粒子間反発力の間には、線形的関係が成立することがわかった。
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