研究概要 |
1.研究対象である遠山郷の代表的な集落として,下伊那群上村の下栗地区を選び,夏・秋の作付の実態調査,ならびに地形資料,気象条件等の収集と観測を行い,地域の面的な属性に関する基礎資料の整備を進めた。また,現地調査に際しては,土地利用技術の聞き取り調査も並行して行った。 2.下栗地区の地形,農業的土地利用特性の定量的な分析を行うために,対象地区を現地距離6×6mのメッシュで区切り,各メッシュの標高,斜面勾配,斜面方位,ならびに夏・秋の作付実態のデータベースを作成した。この結果,下栗地区は標高800-1100mの南東斜面にあり,多くの耕地が30-40度の斜面勾配を有し,50品目以上に及ぶ多品目の作物栽培が行われている地域であることが確認された。 3.気象観測は,1996年12月から日射量,気温,地温を中心として継続中である。既存資料から,標高差の大きい山間谷あいという独特な地形が,気候に及ぼす影響に関して,興味深い事例の一端が明らかになった。 4.遠山郷での広域的な水・土地利用を分析するために,既存の気象,地形,土地利用資料の収集を行うと共に,衛星データによる地表面の土地利用や植生等の被覆特性の分析を準備中である。この分析は次年度の重要な検討課題となる。 5.下栗地区での各種調査結果を含め,遠山郷流域の各種の自然環境条件,水・土地利用との相互関連分析のため,地理情報システムの適用の可能性を検討しており,これによって,遠山郷での水・土地利用が,流域環境保全に果たす役割を明らかにする方法を考察する予定である。
|