研究概要 |
TDR法を用いて,シリカゲル,水酸化アルミナゲル,シリカアルミナゲル,それぞれの複素誘電率を測定した。 シリカゲル,水酸化アルミナゲル縣濁液については2つの緩和が認められた。20GHz近傍に認められた緩和は自由水の配向による緩和であり,誘電緩和スペクトルはCole-Cole型の表現でうまく説明できた。もう一つの緩和については,そのピークの位置あるいはスペクトルの形状は,二つのゲルの間で大きく異なった。シリカゲルの緩和時間は水酸化アルミナゲルの緩和時間と比較して,約10倍長かった。シリカゲルは緩和時間の分布が小さい,すなわちDebye型に近いものであった。他方、水酸化アルミナゲルの分布は高周波側で頻度が多い分布,すなわちCole-Davidson型の表現で実測値を再現することができた。これらの緩和は結合水の分子運動に由来するものである。 シリカアルミナゲルについては,3つの緩和が認められた。高周波側の緩和は自由水の配向によるものである。シリカアルミナゲルの低周波側と中周波側の緩和はSiO_2/Al_2O_3比によって,大きく異なるが,その変化の様子はシリカゲル,アルミナゲルの表面の極性基に結合した結合水の構造を色濃く反映している。すなわち,シリカアルミナゲルの低周波側の緩和過程は,SiO_2/Al_2O_3比にかかわらず,Debye型に近く,シリカゲルと同様の傾向をしめした。また,中周波側の緩和過程における緩和時間の分布は低周波側と比較すると,有意に大きく,水酸化アルミナゲルと同様の傾向を示した。低周波側の緩和強度と中周波側の緩和強度の比はSiO_2/Al_2O_3比が大きくなる程,低周波側の緩和強度が相対的に大きくなった。このことは,低周波側の緩和はSi-OH基の影響を受けた表面極性基に,中周波側の緩和はAl-OH基の影響を受けた表面極性基に結合した水の配向に起因していることを示唆している。
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