研究概要 |
福島は,ダム湖の形状が円錐型,円柱型などの場合を想定して,ダム湖からの蒸発損失量を推定した.水面蒸発速度は,松山地方気象台における日平均の気象観測値を用い,ペンマン型の混合式で算定した.大上は,水田における微気象観測を実施し,植生および水面と大気とのエネルギー交換過程を検討した.具体的には,植生と水面の表面温度と気温・湿度の鉛直分布,放射エネルギー,風速などの測定値を用い,植生と水面における潜熱と顕熱の交換係数あるいは輸送抵抗を算定した.この計算には昨年度構築した多層モデルを適用し,モデルに含まれる上記のパラメータを逆算定することによって,多層モデルを発展させた.また,上部境界条件として気温,湿度,全天日射量,風速の気象条件を与え,水面および植生上における温度環境を再現した.これによって,夏期の高温時に,水面と植生が周囲の温度環境に及ぼす温度環境緩和効果を定量化した. 紙井・近森は,1998年11月から1999年1月にかけて,高知県鏡ダム湖における放熱期における湖水表面冷却に伴う対流現象を明らかにするためのサーモトレーサ(赤外線放射温度計)による調査を実施した.調査は1998年11月11日,12月2日,12月10日,12月17日,12月25日,1999年1月7日,1月9日の7回で,いずれも夕方17時〜18時30分に測定を開始し,22時半〜24時に終了した.この間2時間〜3時間毎に湖水の鉛直温度分布を0.5〜2m間隔で実施した.11月11日の18時頃まで,直径は12cm程度のかなり明瞭な対流セルが時間を追って発達する様子が観察された.水温の最の小高と最低の差の移動平均をとると,時間を追うごとに周期の短くなる波動が認められた.このような波動は12月2・10・17・25日にも見られた.
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