研究概要 |
紙井・近森は1998年11月11日から1999年1月9日にかけて7回と1999年10月29日から12月24日にかけて8回,高知県鏡村の鏡ダム湖において,放熱器における湖面に現れる対流による高温部(対流セル)の測定を行った.測定は赤外線放射計(サーモグラフィ)を用い,夕方から夜11時頃までにかけて行った.また2時間おきに水面から水底まで0.5〜1mピッチで湖水温の鉛直分布を測定した.これをもとに木村・季・伴の鉛直一次元対流モデルによって単位面積当たり沈降流量と沈降速度を算定した.対流セルの大きさは1998年11月11日のものは直径約10cm,1999年11月21日のそれもほぼ同じくらいであった.中心高温部と周囲の低温部との水温格差は約0.7〜1.3℃であった.セルの大きさは日を追って大きくなり,1999年12月11日には直径20〜30cm,12月16日には小さなセルと同時に直径1.5m以上の大きなセル,さらに画面に入りきらない大きなセルも見られた.12月24日にも画面に入らないほどの大きさとなった.1998年の観測では大きなセルと小さなセルがあることがわかっており,改めてこのことが確認された.1999年12月24日の鉛直一次元モデルによる結果では,沈降流量はおおむね0.02〜0.03m^3/s/m^2であった. 福島,大上は水田における微気象観測の結果から,植生が水面をとおして大気と水体に与えるエネルギー交換過程を実測した.植生の繁茂,水面温度,気温,湿度の鉛直分布,放射エネルギー,風速を実測し,水面における顕熱と潜熱の交換係数を計算した.また,一昨年の研究で構築した多層モデルを適用してモデルパラメータを推定し,これを用いて気温,湿度,全天日射量,風速などの条件を再現することを試みた.これによって,夏期の高温時に,水面と植生が周囲の温度環境に及ぼす影響を定量化することができた.
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