研究概要 |
水環境の保全・改善には、対象とする各種水域に付加された外乱に対する水域内流動およびこれに対する水環境の応答に関する定量的把握が最も重要となる. 本研究は,農業用排水路,クリークおよびため池などの比較的水環境の保全・改善には、対象とする各種水域に付加された外乱に対する水深が浅く,しかも外界水との交換率が悪い停滞性水域における水環境を対象とし、熱的擾乱が付加された水域における水質予測モデルの確立を目的としたものである. まず,現地観測により,水域に付加される日サイクルの熱的擾乱に基づく流動と水質輸送に及ぼす影響に関する検討を行い,水質悪化が顕著となる夏期に,日射による水温成層の発達が水質の鉛直輸送を抑制すること,一方,夜間の冷却による混合層の発達に伴う密度流が水質の鉛直輸送を促進することなどを明らかにした.また,室内水理実験により,段落ち部を有する水域における熱的擾乱に起因する密度流現象に関する検討を行い,冷却期において,段落ち部の存在による水深差に基づく水平方向の密度不安定による浅水域と深水域の間の水平対流が,水域内循環流の規模を大きくする効果を有することが明らかとなった. 次いで,水質予測における主要な境界条件の一つである水位変動予測手法について検討した.河川感潮域の水位変動を対象として強い自己相関を有する時系列の予測に有効とされるフィードバック型ニューラルネットワークモデルの適用可能性を示した. さらに,現地観測および室内水理実験に基づいた鉛直2次元熱対流モデルにより,段落ち部を有する水域の非成層場および成層場の水面冷却による対流セルの形成,発達過程とその流動特性について検討した.この鉛直2次元モデルは,水域内の流動および水質輸送を担う対流セル形成・発達過程・段落ち部存在による水平対流の形成とその規模および対流セル構造に及ぼす密度界面の影響などをほぼ再現することができた.
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