農村地域における景観評価に関する調査研究の最終年度であったため、前年度までの調査結果の補充と、その成果の確認を主眼とした調査を行った。 農村景観の整備は、わが国の場合、主として市町村自治体が、条例の制定や景観整備への助成によって行うことが多く、一義的には行政の姿勢、特に首長の施政方針や、担当者の判断の如何に左右されることが多い。 事例対象地域の多くは、首長の景観に対する見識が高く、市町村の総合発展計画等、まちづくり計画の中に、景観整備が明確に位置付けられ、それに基づいて各種の整備事業や関連助成事業が展開している。 しかし、こうした行政主導の景観整備は、ともすれば住民の景観認識と乖離して行われる場合があったり、外部専門家の「客観的評価」に大きく影響を受けて実施されることが少なくない。 グリーン・ツーリズムに代表される、都市と農村の交流が活発になるにつれ、市町村外からの「交流人口」にたいするイメージや、アッピール性として、農村景観はますます重視されつつあるが、こうした現実的な課題に対して、住民の景観意識の現状と、「客観的」な景観評価の整合化が重要になると考えられ、外部-内部、主体-客体、素人-専門家、住民-行政、民間企業-行政、住民-民間企業といった多元的視野構造に立った景観評価と整備を実現する態勢づくりが求められている。
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