本研究では、環境ガス組成および圧力の初期制御のみを行うことにより、密閉環境下で農産物を保持する最適条件を明らかにすることを目的とした。平成9年度は、全圧および酸素分圧を設定し、その効果を野菜付着細菌の増殖を中心に検討した。試料には植物工場で無菌に近い状態で栽培されたリ-フレタスを選定した。リ-フレタスを入手後、数時間冷蔵庫に保管した後、実験に供した。試料の質量は容器内の空間占有率が等しくなるように分配した。野菜付着の一般生菌数は、保存の前後に、標準寒天培地と等価なシャーレ(島九細菌検査機器(株)製)を用いて35℃48時間の平板法で測定した。保存にはアクリル製真空容器(14.5リットル)を用いた。実験区は低圧低酸素濃度区と対照区とした。低圧低酸素濃度区は、容器に試料を静置した後、真空ポンプにより全圧を25kPaまで減圧することにより、酸素濃度を5kPaに設定した。対照区では、大気組成のまま全圧101kPaで密閉した。なお、目減り対策として水を入れたシャーレを保存容器内部に設置した。保存温度は283K(10℃)とし、10℃に設定した恒温器に両実験区の容器ごと設置し、19日間保存した。保存前の一般生菌数は、低圧低酸素濃度区、対照区のいずれにおいても検出不能のレベルであったのに対し、保存後は対照区で2.3x10^7CFU/g、低圧低酸素濃度区で7.3X10^3CFU/gとなり、後者の環境が細菌の増殖抑制に顕著な効果を示した。この効果には低圧と低酸素濃度の2つの要因が考えられるので、今後、各々の要因に分けて細菌増殖の抑制効果を検討する必要がある。
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