本研究は、大型サイロ内での穀物水分むらの発生原因を追究して、これに関与する水分移動機構を実験的かつ理論的に解明するとともに、サイロ内の穀物水分分布の異常がモニタリングできる計測システムを開発することを目的としている。穀物貯蔵サイロでは、均一な水分の穀粒を投入しておいても、数カ月で穀物層内に水分むらが発生することがある。その原因は、夜間の冷却などによってサイロ内壁面に結露が発生したり、サイロ内部の穀物の発熱や外壁からの日射加熱などによって温度差が生じ、この穀物温度差に伴う水分移動によるものと考えられる。そこで先ず、均一な水分の穀物層に温度差を与え、この温度差に伴う水分移動を定量的に把握するための基礎実験とコンピュータシミュレーションを行った。その結果、サイロ内の穀物温度差による穀物層内での直接的水分移動は意外に少なく、サイロ内壁面に一度結露してから滴下する水分移動量が大きいことが明かとなった。次に、穀物水分分布のモニタリングが自動的に行えるような、サイロ内の水分分布の計測システムを構築するため、厚い穀物層に対してマイクロ波TDT計測を行った。このTDT計測では、購入設備備品のディジタイジングオシロスーコープ等を用いて、電磁波パルスを発生させ厚い穀物層中に投射して、その透過波形を受信・解析して穀物層の水分分布の異常を発見するための実験を行った。今年度は1m程度の厚い穀物層を挟んで、発信および受信用ホーンアンテナを設置し非接触測定する方法を試みた。その結果、高水分穀物層では電磁波パルスは低速度で伝わり、低水分穀物層では高速度で伝搬することが非接触測定においても計測可能なことが明かとなった。また、穀物水分の異なる境界面では反射が生じるが、パルスの反射波形から水分むらなどに伴う異常を検知し水分むらの位置を特定する方法を検討中である。
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