1. 研究目的および装置 1)本研究の目的は、すべり弾性表面波センサ(SH-SAWセンサ)を試作して、液状飲食物の識別法ならびに溶液の濃度測定法を確立し、液状食品の製造工程管理用センサとしての可能性を考究することにある。 2)実験装置は、シグナルジェネレータ、ベクトルボルトメータ、すべり弾性表面波センサおよび情報処理装置から構成する。ベクトルボルトメータによって信号の位相差と振幅比を実測し、速度変化と減衰変化を経て、最終的に試料の導電率と比誘電率を演算できるようにした。 2. 研究成果 1)設計共振周波数がそれぞれ30、50および100MHzのすべり弾性表面波センサを試作し、これらの実測共振周波数がそれぞれ設計値にほぼ近いことを確認した。 2)すべり弾性表面波センサによるジュース、焼酎およびウイスキーの導電率と比誘電率の値から、それぞれの識別が可能であった。 3)焼酎の製造工程を想定した実験では、グルコースとエタノールのそれぞれ1成分溶液は非電解質であるため、濃度と導電率の間には相関がなく、比誘電率とは逆比例の相関があった。また、クエン酸の1成分溶液は弱電解質であるため、導電率は、濃度とともに増加し比誘電率は減少した。 4)エタノールとクエン酸またはグルコースとクエン酸の混合溶液は相乗効果のために濃度測定は困難であり、今後改良を要する。 5)グルコース、エタノールおよびクエン酸を混合した醪モデル中のエタノール濃度は、真値に対して0.99の高相関で測定できた。実際の醪中のエタノール濃度に対しては0.88の相関係数が得られ、焼酎の製造工程管理用センサの可能性が示された。 6)エチレングリコール系ブラインの屈折濃度計による濃度とSH-SAWによる予測濃度との間には高い相関があった。また、濃度1〜5%の不純物を含むブラインの濃度と導電率、比誘電率の間には高い相関があった。これらの結果から、SH-SAWセンサのブライン管理センサとしての可能性が示された。
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