本研究は、タイ国南部に残された砂丘浜堤の劣悪な土壌環境を、隣接する地域の熱帯泥炭、山土を混入による物理・化学性の改良で、作物生産が可能となるかどうか検討するものである。手法としては、対象が遠隔地であるため、室内実験とシミュレーションによる評価を行うこととし、本年度は物理性の実験とそれに基づく水分環境のシミュレーションを行った。 物理性 砂丘砂の飽和透水性は0.018cm/sと大きな値を持つが、泥炭や山土の混入により低下し、泥炭混入10%(体積率)になると3オーダー以上低下してしまい、通気・排水性の両面から4ないし6%程度の混入が妥当と考えられた。また、保水性は泥炭や山土の混入により改善されるが、過剰な混入は逆に有効水分を低下させてしまい、結果として、砂:泥炭:山土が体積比で84:6:10の時に最も有効水分が増加していることが解った。 水分環境のシミュレーション ここで求めた土壌の物理性、および現地の気象データーと作物データーを用いて、SPACモデルにより改良による水分環境の変化を調べた。この結果、砂100%では灌漑なしで作物生育が困難であるが、砂:泥炭:山土=84:6:10では1月から4月の強い乾季の1時期を除けば降雨のみでも作物生育が可能となることが予想された。また、降雨のうちで無効損失が43%であったものが、27%にまで減少する結果となった。
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