研究概要 |
本研究ではこれまで、貯蔵中の光強度、気温、明期時間、光質などの影響について、組織培養小植物体およびセル成型苗を対象として詳細な研究を行ってきた。今年度は、貯蔵中の乾物重の経日変化を数理生態学的な手法を用いて予測することを試みた。このような貯蔵中の乾物重変化の予測は、その貯蔵環境条件における貯蔵可能期間を予測する上で重要な知見となる。 材料としてはブロッコリの組織培養小植物体(以下、小植物体)を用いた。光独立栄養培養法により3週間培養し、移植に適した小値物体の二酸化炭素交換速度を気温5水準(3,5,10,15,および25℃)、光強度(PPF:光合成有効光量子束)3水準(0,2,および4μmol m^<-2>s^<-1>)のもとで測定した。測定した二酸化炭素交換速度を別途構築した数理モデルに当てはめ、貯蔵中の乾物重の経日変化をシミュレートした。数値計算はRunge-Kutta法により、算定時間は3時間毎とした。算定された結果は、実測された乾物重の経日変化と良く一致した。このことは、二酸化炭素交換速度の特性が貯蔵期間中におおきく変化しなかったことを示す。また、このシミュレーションの手法により、明期時間が24時間以下である場合に乾物重変化を最小とするPPFと明期時間の組み合わせなどが求められる。 小植物体の葉の明期二酸化炭素交換速度(純光合成速度)は葉内炭水化物濃度によって影響を受ける。また、貯蔵中の小植物体の炭水化物濃度が貯蔵条件によって大きく異なることが示されている。さらには、貯蔵前の小植物体内の炭水化物濃度が貯蔵可能な期間に影響を及ぼすと考えられる。本年度は、培養環境条件が小植物体の炭水化物(スクロース、グルコース、フルクトース、でんぷん)濃度に及ぼす影響を、トマトおよびサツマイモ培養小植物体について調ベ、培地中のショ糖濃度、培養器換気方法などの影響を確認できた。これらの得られた結果は、小植物体の貯蔵環境条件を策定する上で重要な知見を与えた。得られた結果は適当な学術雑誌にて発表する予定である。
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