穀物は生き物であり、収穫後も条件を満たせば発芽し呼吸も極めて盛んとなる。しかも物理的には断熱材である。穀物の断熱性を利用した簡易な構造のサイロが我が国でも広く使われるようになった。これらが不注意に使われている場合、一定のパタンの事故、籾の貯蔵においては各種変質米、特にヤケ米と言われる発酵変質米を生じ易い。貯蔵施設構造、気象条件など環境要因、それに伴うサイロ内の気流の動きと水分移動、断熱材としての籾の熱的な性質都、籾及びそれに寄生した微生物の生物体としての活動に伴う諸現象の関係に着目、さらに事故の種類により、その結果として生じたヤケ米のミクロフローラが異なることに着目し、原因と対策の系統的な類別下を行うことを試みた。ヤケ米の発生事故の存在は極秘にされていることが多いが、幾つかの施設・機関の協力により各種事故米を入手、この発生要因を検討した。いわゆるヤケ米は発酵して程度の如何を問わず茶褐色に着色したコメをさすものとされる。サイロ内での発生基準は何らかの原因により高水分・高温となった部分を生じ、それが籾の付着微生物、カビやバチルスの類を増殖させ、呼吸により熱と水分などを生じ、発芽を招き、籾の断熱性によりホットスポットを作り、悪循環することに起因する。原因となる最初の高水分は、(1)雨仕舞いの悪さ、(2)内外温度差によるサイロ内結露、(3)気流のサイロ内移動中の夏・水蒸気交換による結露、(4)水分差がありすぎる籾の混合投入などがあるが、(5)不可欠な時のヘッドドライヤ不使用、(6)ホットスポット発生時の対処ミス、特にローテーションの不適切さ、(7)特定部分への滞留、(8)すでに変質すた籾の受け入れなど、使用上・操作上のミスに起因するものも多い。寒冷地では上記のタイプが多いが、暖地ではコンバイン収穫後、乾燥されるまでの容器内における高水分・高温籾のラクトバチルス等による発酵事故が圧倒的に顕著である。他にその他の変質米の検討も行った。
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