これまでの研究で組織付着性のLactobacillus菌株を選抜し、その中の一菌株Lactobacillus crispatus JCM5810の付着因子が43kDaのS-layerタンパク質であることを明らかにした。平成9年度はS-layerタンパク質遺伝子のクローニングおよび遺伝子の塩基配列の決定を以下の方法により行った。すなわち、S-layerタンパク質を高速液体クロマトグラフィーにより精製した。未分解のS-layerタンパク質およびそれをトリプシンで分解して生成したペプチド断片のN末端アミノ酸配列をプロテインシークエンサーで決定した。アミノ酸配列から推定した塩基配列を基にプローブを作成した。JCM5810株の染色体DNAを調製し、制限酵素で消化し、アガロースゲル電気泳動後、Southern blottingにより目的とするDNAフラグメントをプローブで検出した。目的とするフラグメントをゲルから単離し、pBluescript II KS(^+)vectorに挿入し大腸菌で増幅させた。目的とするクローンをコロニーハイブリダイゼーションで検出した。Sangerのdideoxy法により塩基配列を決定し、塩基配列からアミノ酸配列を推定した。その結果、S-layerタンパク質遺伝子(cbsA)は30残基のシグナルペプチドを含む440残基のアミノ酸をコードしていることが明らかとなった。付着性を示さないLactobacillus acidophilus JCM1132(^=ATCC4356)のS-layerタンパク質との相同性を比較したところ、シグナルペプチドは1残基が異なるのみで完全に配列が一致した。C末端側も77%と相同性が高かったが、N末端側は30%と低く、付着に関与する配列はN末端側に存在すると推定された。
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