研究概要 |
平成10年度はLactobacillus crispatus JCM5810のアドへシンであるS-1ayerタンパク質(CbsA,43kDa,410アミノ酸残基)のIV型コラーゲン(CIV)への結合領域の推定および毒素原性大腸菌の付着阻害への応用について研究した。 Deletionやpoint mutationを挿入してHis-tag fusionタンパク質として発現させたCbsAおよびCbsAとSlpAのfusionタンパク質とCIVとの結合性を調べた。その結果、CIV結合領域はN末端側の1-287残基の広い配列が必要であることが示された。 Lb.Crispatus JCM5810およびCbsAは毒素原性大腸菌(ETEC)ATCC31705が上皮下組織モデルとして用いたMatrigelや固定化ラミニンに付着するのを阻害した。過ヨウ素酸化実験からラミニン分子への結合は糖鎖ではなくペプチド鎖を標的としていることが明らかにした。CbsAのendoproteinase Arg-C分解物も付着阻害活性を示したことから、付着阻害には全配列は不要で9〜22kDaのフラグメントでも可能であることが示された。 以上の平成9,10年度の研究から乳酸桿菌のS-1ayerタンパク質(CbsA)はアドへシンとして機能すること、その結合配列はN末端側にあること、CbsAを病原菌の付着阻害因子として利用できる可能性のあることを明らかにした。これによって、菌体およびCbsAを利用して、病原菌の定着を阻害することによる腸管感染症の予防機能を有する発酵乳の開発の可能性を示すことができた。
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