リードカナリーグラス(Phalaris arundinacea L.)は環境に対して広い適応性を持つが、一般には放牧や青刈利用では難のある牧草とされている。しかしながら、優良牧草の生育が適さないような北陸多雪地帯の草地にはうまく適応して優占化し、高収量をあげている場合もある。新潟県内では調査を実施したほとんどの公共牧場においてリードカナリーグラスが繁茂するものの放牧牛には好んでは採食されないこと、エゾノギシギシもすべての牧場で認められたがリードカナリーグラスの繁茂する牧区あるいは部分においてはその繁茂は抑制され、良好な草地景観が維持されていることが確認された。また、新潟県妙法育成牧場では積極的にリードカナリーグラスをサイレージとして貯蔵利用しており、若ぶな高原牧場では貯蔵利用を検討中であることが確認された。 そこで、一般にサイレージ適性は低いとされているリードカナリーグラスを良質サイレージとして貯蔵飼料化するため、材料草中の構造性炭水化物を加水分解するための酵素製剤(Acremonium cellulolyticus Y-94由来セルラーゼ、AC)添加区、乳酸生成を目的とした市販の酵素入り乳酸菌製剤(SL)添加区、予乾区および対照区を設け、同時にCO_2の添加条件下でも同様の処理区を設けてサイレージ調製を行った。その結果、サイレージの発酵品質の指標であるpHの低下および乳酸含有率の上昇と揮発性脂肪酸含有率の低下、そしてサイレージの細胞壁成分であるセルロース含有率の低下に起因する中性および酸性デタージエント繊維含有率の低下から、ACおよびSL添加によってサイレージの発酵品質と飼料価値が向上すること、しかしながら予乾の効果および通常の埋蔵密度でのCO_2の添加効果は顕著ではないことが明らかとなった。さらに、AC添加サイレージを調製してシバヤギを用いた消化試験を行った結果、ACの添加によっても可消化養分総量は増加せず、そして繊維成分の消化率も低下すること、さらにシバヤギの窒素蓄積量は低下すること、しかしながら可溶無窒素物の消化率は向上することが明らかとなった。 以上の結果をとりまとめ、学会誌への投稿にむけて、現在、論文4編を準備中である。
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