研究概要 |
本年度は,めん羊ルーメン液よりフィターゼを生産する細菌を検索した.その結果,種種の培地を用いたにもかかわらず,好気条件でのみフィターゼ陽性菌が得られた.これらの細菌は,フィターゼスクリーニング培地上で明瞭なハロ-を形成する通性嫌気性細菌であった.ルーメンにおけるフィターゼ陽性菌数を計数したところ,給餌1.5時間後に10^5レベルに達したが,その後次第に減少し,次の給餌直前には検出されなくなった.これらの細菌は,グラム陰性桿菌とグラム陽性の短桿菌で,生理性状を調べた結果,前者は腸内菌科に属し,後者はコリネバクテリウムに近いものと判断された.これらの細菌から抽出したゲノムDNAを鋳型にして,PCR法によって16SrDNAを増幅し,その後シーケンスを行った.CLUSTAL Wによって系統樹を作製したところ,前者はKlebsiella pneumoniae後者はCorynebacterium vitarumenに近い細菌であることが判明した.今後,これらの細菌から,フィターゼ遺伝子をクローニングする予定である. また,フィターゼ陽性菌として短離された2菌株は,菌数の推移からみてルーメンにおいてはマイナ-なグループでしかない.嫌気条件下では,まったくフィターゼ陽性菌が得られなかったため,混合ルーメン細菌および混合ルーメン絨毛虫の懸濁液を調製し,フィターゼ活性を測定したが,いずれも低いものであった.したがって,これまで信じられてきたようにルーメンではフィチンが微生物の作用によって分解されるという事は,かならずしも正しくないことが判明した.
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