本年度は、昨年度にフィターゼ生産菌としてめん羊ルーメンより単離したKlebsiella pneumoniae kpu 001株からフィターゼ遺伝子を単離するため、ゲノムライブラリーを構築し、フィターゼ遺伝子のクローニングを行った。定法に従ってゲノムDNAを抽出し、Eco Rlで切断後プラスミドベクターpBluescript II SK(+)にライゲーションした。コンピテントセルE.coli XL1-Blue MRF'を形質転換し、青白スクリーニングで約600の形質転換体を得た。さらに、これらの形質転換体からフィターゼスクリーニング培地上でのハローの形成を指標として陽性クローンを選抜したところ、フィターゼ陽性をしめす18クローン得られた。これらのクローンの持つベクター挿入断片は、0.2から7kbの広範囲に及んだ。このうち、もっともハローがはっきりしており活性が強いと思われた挿入断片の部分塩基配列を解読したところ約150bpの範囲で大腸菌プロリポプロテインジアシルグリセリル転移酵素やチミジレート合成酵素の部分と高い相同性が認められた。この部分にコードされる推定アミノ酸配列は、RQPDAQFTGGWVQYISMGQILSIPMVLAGIIMMVWAYRHRPQQとなり、既知のフィターゼやホスファターゼと比較したところ真核生物に由来のホスファターゼのC末端側に見られる疎水性領域とよく一致した。このオリゴペプチドの機能についてはまだ不明であるが、フィターゼやホスファターゼの活性を安定化ないしは増強する可能性がある。
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