研究概要 |
この研究では,ルーメンからフィターゼ活性をもつ細菌を単離同定し、ルーメン内の棲息数を推定し、遺伝子情報を得ようと試みた。その結果(1)めん羊ルーメンよう好気条件下のPSM寒天培地上にグラム陰性桿菌とグラム陽性短桿の2種の細菌と1種の真菌がフィターゼ陽性微生物として単離された。しかし、嫌気条件下のM10倍地上にフィターゼ活性をもつ菌体は認められなかった。(2)PSM寒天で単離された細菌は、M10倍地上でも成育しコロニーを形成する通性嫌気性菌であったが、嫌気条件下ではフィターゼの存在を示すハローを形成しなかった。(3)形態と生理性状から,これらはKlebsiella属とCorynebacterium属と思われ、16rRNA遺伝子の解析から、K.pneumoniaeとC.vitarumenの近縁種とされた.(4)めん羊ルーメン内のフィターゼ陽性菌数は,飼料給餌直後に約10^5chu/mlに達したが,その後減少し次の飼料の給与時に検出不可能になった.(5)K..pneumoniaekpu 001株のゲノミックライブラリーあるいはPCRによって作成したライブラリーからフィターゼ遺伝子を単離作業を行いPSM培地上で明瞭なハロー形成をする大腸菌クローンよりプロリポプロテインジアシルグリセリル転位酵素やチミジレート合成酵素の部分と高い相同性が認められた配列を得たが、挿入断片約1.5kbを解読したところ大腸菌へリカーゼBに近い遺伝子と推測され、フェターゼないしは広義のホスファターゼとの間連性は低いことが明らかになった。クローン選択の困難さなどフィターゼクローニングの技術的な困難さが、おそらくデータベース中で登録数の著しい少なさに反映しているものと考えられるが、フィターゼ遺伝子そのものもコピー数が少ないなどの理由があったものと考えられた。
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