体外受精については、はじめにmBO液を用いた体外受精における媒精時の気相、とくに気相中の酸素濃度の体外受精率および受精後の胚発生に及ぼす影響を調べるため、5%あるいは20%酸素を含む気相下で媒精した。その結果、体外受精率には酸素濃度による影響は認められなかった。しかし、一般的に用いられている20%の酸素を含む気相よりも、5%酸素を含む気相中で媒精した方が胚盤胞への発育率が高くなることが明らかになった。さらに、修正合成卵管液を用いた媒精条件についても検討した結果、媒精時の酸素濃度の違いにより受精率に差異は認められないが、ブドウ糖濃度、媒精培地サイズおよび精子濃度が受精率に影響すること、さらに修正合成卵管液を用いた体外受精系は、従来のmBO液を用いた媒精系より受精に必要な精子数(濃度)を少なくできることが示唆された。 合成卵管液を用いた牛体外受精卵の体外培養に関する検討では、まず、20種のアミノ酸を含む修正合成卵管液を用いて、ウシ体外受精卵の発育に及ぼすインスリンとインスリン様細胞増殖因子の影響を調べた結果、両者ともインスリン様細胞増殖因子の受容体を介して、受精卵の発育促進効果をもたらしていることが分かった。また、インスリンを含む修正合成卵管液へのグリシンおよびタウリンの添加効果を影響を調べた結果、グリシンあるいはタウリンの添加により受精卵の胚盤胞への発育成績は改善されることも明らかになった。さらに、これらのアミノ酸とインスリンを添加した修正合成卵管液を用いて牛体外受精卵を培養する場合、培養途中で培地交換を行うと、胚発育を損なうことなく培地内のアンモニア濃度を低下させ、胚移植後の胎子発生に効果のあることが示唆された。
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