研究概要 |
体外受精系については、受精時の気相中の酸素濃度(5〜20%)は受精率には影響しないが、5%の方が受精後の胚発生率が高くなることが分かった。媒精培地中の最適ブドウ糖濃度は受精培地により異なり、mBO液(Takahashi&First,1992)では5〜13.9mM、修正合成卵管液(mSOF:Takahashi&First,1992)では0〜1mM濃度であることも明らかになった。また、mSOFを用いた場合、mBO液に比べて少ない精子数(濃度)で高い受精率の得られること、乳酸およびピルビン酸の添加濃度やアミノ酸添加により受精率に差異は認められないことも分かった。現在、mBO液とmSOFで受精して得られた受精卵の発生能について検討中である。 受精卵の体外培養系については、mSOFを基礎培地として各種添加物質の胚発生への影響を検討した結果、必須および非必須アミノ酸の添加により胚発生率が改善されること、卵管液や子宮液内に高濃度に存在するグリシンおよびタウリンの添加により更に胚発生率の改善されること、インスリンおよびIGF-1はIGF-1レセブターを介して胚に働きアミノ酸取り込みを促すことにより胚発生率を向上させることが明らかになった。また、アミノ酸を含むmSOF中には、アミノ酸の自然崩壊と胚の代謝によりアンモニウムイオンの蓄積することが判明したが、培地交換によりアンモニア濃度を低くしても胚発生率の向上は認められなれなかった。さらに、mSOF中の最適なブドウ糖濃度は胚の発育ステージによって異なり、8細胞期を境に大きく変化することも明らかになった。 本研究で開発・確立した体外培養系を利用して、高い発生能を有する卵子の形態学的選抜法も確立することができ、さらに核移植(クローン)胚を体外培養した結果、クローン胚は高率に胚盤胞へ発育することが確認され、現在クローン胚をレシピエントに移植して子牛への発育率を確認中である。
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