研究課題/領域番号 |
09660296
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
志賀 瓏郎 岩手大学, 農学部, 教授 (20003783)
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研究分担者 |
岡田 啓司 岩手大学, 農学部, 助手 (60233326)
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キーワード | 乳牛 / 食塩 / 塩味 / 風味異常乳 / Naポンプ / Na / K比 / Na-K・ATPase / 血漿ANP濃度 |
研究概要 |
岩手県下で認められた、乳牛への食塩過剰給与により生じた風味異常乳の原因究明のため、(1)飼養条件の異なる各種牧場の牛乳のNa、Cl、K濃度を調べたところ、NaとKの間には有意の負の相関が、Na+KとClの間には有意の正の相関があり、風味異常乳は乳汁中のNaCl濃度だけではなく、NaとKの濃度比(Na/K比)が関係すること、また、風味異常乳はNa/K比が高く(6以上)、Na/K比も風味に関係することが示唆された。そこで、(2)生理的範囲でNa/K比を0.2〜5.0に調整した人工乳を用い、パネラーの協力により風味検査を行なったところ、Na^+が10mM〜50mMの範囲内で10mM上昇する毎に塩味が強まる一方、甘味がなくなる事が明らかとなった。また、K濃度の増減に対して一部に渋味などを感じたパネラーも居り、風味とNa/K比の関係はさらに検討を要する。(3)乳牛への食塩の過剰給与により誘起される高Na血に対して、恒常性維持のためにNa^+の増加に対する一連のNa^+調節機構としては、Naポンプのほか、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、アルドステロン、バソプレシン、レニン-アンギオテンシンなどのホルモンの調節機構が関与しているが、乳牛への食塩の過剰給与がそれらのNa^+調節機構に及ぼす影響について調べるため、16日間の食塩200g/頭/日の給与実験を行い、水分およびミネラル代謝と血漿ANP濃度の変化について測定した。泌乳量は変化しなかったが、飲水量は減少傾向を示し、血清Na濃度はむしろ低下した。また、血漿ANP濃度は対照時に比べて16日目に5頭中2頭ではやや高かったが、3頭では60%以下のレベルに低下しており、Na^+がそれほど体内に吸収されていないことを示唆した。しかし、乳汁中NaとCl濃度の上昇、K濃度の低下、尿中Na濃度の上昇、K濃度の低下が認められ、程度は違ったが、C農場での風味異常乳と同様な変化を認めた。高Na^+がNaポンプに対し負のフィードバック作用を作動させ、Na^+の吸収を抑制した可能性がある。
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