研究概要 |
卵の外側を被っている無細胞性の膜は“卵外被"と呼ばれている。鳥類の卵の卵黄膜は,卵黄と卵白の境界にある卵外被で,内層と外層の二層からなるが,卵子は卵黄膜内層だけに覆われた状態で排卵される。卵黄膜外層は卵子が卵管ロート部に取り込まれた後に卵管上皮細胞が分泌したものである。われわれは排卵前卵胞の顆粒膜細胞が,卵黄膜内層のタンパクであるZPCタンパク(精子レセプター)を含んでいることを見つけた。そこでこのZPCタンパクの発現をウエスタンブロッティングおよびノーザンブロッティングで解析し,さらに培養顆粒膜細胞を用いて産生及び分泌の調節機構について調べた。実験動物として成熟雌日本ウズラを用いた。排卵前卵胞から得た顆粒膜細胞をコラゲナーゼで単離し,M199培養液中で41Cで培養した。ZPCタンパクの合成量の測定は,細胞を[^3H]ロイシンと6時間インキュベートし,抗33K抗体を用いて免疫沈降法によって定量した。ウエスタンブロッティングは,SDSで可溶化したタンパクをSDS-PAGEで分離し,抗33K抗体とHRP-標識二次抗体を用いておこなった。またノーザンブロッティングによる解析では,全RNAをアガロース電気泳動で分離し,^<32>P-標識プローブによって検出した。その結果,ノーザンブロッティング法によって,顆粒膜細胞にのみ1.4kbのZPCmRNAが検出された。卵胞が成熟するにつれてこのシグナルは強くなる傾向にあり,これはウエスタンブロッティング法による卵胞のZPC含有量の結果ともよく一致した。培養顆粒膜細胞を用いて各種ホルモンや細胞成長因子の効果を調べたところ,ZPCの産生はFSHによって最も顕著に促進されることがわかった。以上の結果から,ZPCタンパクはFSHの刺激によって顆粒膜細胞で産生されていることが明らかとなった。
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