本研究は新たに開発した競合PCRによる特定ルーメン菌のDNA定量法を利用することで、ルーメンへ移植された遺伝子組み換え菌のより精度の高い追跡をはかろうとするものである。平成9年度の研究成果は以下のとおりである。 1.標的とする組み換え体の16SrDNA特定領域とホモロガスなものをもつ近縁菌株を有しないルーメン液供与ヒツジを選抜できた。このヒツジのルーメン液を使用し、そこへ移植した組み換え体の高精度な追跡が可能となった。 2.in vitro培養実験によると、新鮮ルーメン液に移植された組み換え体は、生菌数で追うと3時間以降急減するが、DNAで追うとやはり急減するものの少し減少が遅れる傾向があった。これは死菌由来のDNAも定量してしまうためと思われた。ルーメン混合菌のみの培養液に組み換え体を移植した場合、生菌数は48時間で10^6/mlから10^3/mlのレベルへ低下したが、DNAで追うと48時間目でも移植直後と同じレベルの組み換え体DNAが定量された。このことは、ルーメン混合菌の培養液(飼料粒子やプロトゾアを含まない)では死滅した組み換え体およびそのDNAの分解が極めて緩慢なことを示している。 3.以上のことから、競合PCRによるDNAレベルでの組み換え体追跡には実際のルーメン液中でも十分に応用可能だが、菌体分解やDNase活性の強い条件下でのみ適応可能なことが明らかになった。
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