本研究は新たに開発した競合PCRによる特定ルーメン菌のDNA定量法を利用することで、ルーメンへ移植された遺伝子組み換え菌のより精度の高い追跡をはかろうとするものである。平成10年度の研究成果は以下のとおりである。 1. 標的とする組み換え体の16SrDNA特定領域とホモロガスなものをもつ近縁ルーメン菌株を有しないヒツジを選抜し、このヒツジのルーメン内へ大量の組み換え体(×10^<12>細胞相当)を移植した。その後、組み換え体の経時的追跡を試みた。なお追跡には、高濃度の抗生物質を含有する選択培地による培養計数法と、本研究で新たに開発した競合PCR法(非培養法)を併用した。 2. ヒツジルーメン内に移植された組み換え体は、移植後急激にルーメン内密度を減らした(×10^7/mlが24時間で×10^2/mlへ低下)。生菌数(培養法)で追うと72時間目まで計数可能であったが、144時間目以降は検出できなくなった。非培養の競合PCR法でも、標的DNA領域の定量値はほぼ同様の推移を示した。 3. 以上のことから、競合PCRによるDNAレベルでの組み換え体追跡は、実際のルーメン内でも十分に応用可能であり、死菌由来のDNAは迅速に分解されるため、誤差要因にはならないことが示唆された。一方、組み換え体のルーメン内高密度定着には強い制限要因があり、それらを明らかにしていく必要があると思われる。
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