研究概要 |
本研究プロジェグトの目的は,精子形成中に起こる雄性DNAのプロタミン封入と卵子侵入後の脱プロタミン封入および雄性前核形成を調節している機構の解析を解析し,解明することにある。 平成10年度は,アクリジン・オレンジ染色および共焦点レーザー蛍光顕微鏡を用いたジスルフィド(-S-S-)結合の状態の評価系を用いて、ラット精子細胞の成熟および卵子への精子侵入過程で。ジスルフィド(-S-S-)結合の状態がどのように変化するのかについて検討を行った結果、ラットでは精子が精巣から精巣上体頭部に移行するときに精子細胞内のチオール(プロタミン)が酸化され、ジスルフィド(-S-S-)結合が形成されること、また、その精子細胞のジスルフィド(-S-S-)結合の一部は精子が卵子の透明帯を通過した直後から還元され始めることを明らかにした。さらに、ラット卵子の精子侵入および前核形成にともなう卵子内グルタチオンおよびその関連物質の変動を高速液体クロマトグラフィーを用いて解析した。その結巣、卵子内グルタチオンの酸化型には精子侵入および前核形成の過程で変化はなかったが還元型グルタチオン量は、侵入した精子頭部が膨化後に低下した。また、グルタミルシスチン量は、同時期に増加した。これらの結果から、精子侵入後の卵子内グルタチオン量の低下は、卵子の前核形成にともなうグルタミルトランスペプチダーゼの活性化による結果である可能性が示唆された。 以上の結果から,ラット卵子への侵入にともなう精子ジスルフィド(-S-S-)結合の還元と卵子内グルタチオン量の低下は異なる時期に起ることが明らかになった。
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