研究概要 |
子牛における過剰Metの有害作用はMetとLysを同時投与した実験では認められたが、Met単独でも生じることは未証明である。また、側鎖アミノ酸(BCAA)との「拮抗」は「毒性」とは無関係に生じるのか、それとも「毒性」に付随して生じるのかも不明である。そこで、これらの問題について検討した。 [方法]5週齢離乳後も食道溝反射を維持させたホルスタイン種雄子牛24頭を用い、7週齢(平均体重68.8±7.1kg)から2週間のN出納試験を実施した。この間、トウモロコシ84%、大豆粕14%から成る濃厚飼料(CP14.9%DM)と稲ワラ(CP5.0%DM)を9:1の現物重量比で、1日に体重の3.0%相当を朝夕2回に分けて給与し、水は自由に与えた。子牛は6頭ずつ4区に分け、各区に0,6,12,24g/dずつのDL-Metを朝夕等分して食道溝経由で投与した(0g/d区は温湯のみ)。2週目後半5日間の糞尿を全量採取し、最終日朝の飼料およびDL-Met投与直前(0h)と3h後に頚静脈から採血した。なお、本実験は当初1区5頭×5区で実施する予定であったが、36g/d相当のDL-Met溶液を飲まなかったため、上限を24g/dとした。 [結果]2週間の増体量や稲ワラ摂取量には差がなかったが、体重kg当たりの濃厚飼料と全飼料摂取量、摂取N当たりのN蓄積率、および吸収N当たりのN蓄積率は24g/d区で有意に低下した(P<0.05).また、N蓄積率は6g/d区で最も高い傾向があったが、0g/d区および12g/d区との差は有意ではなかった(P>0.10)。血漿遊離Met濃度はDL-Metの投与量に比例して0hでは3.1から141.1μmod/dlまで、3hでは2.6から189.1μmol/dlまで直線的に増加した。一方、血漿BCAA(Val、Leu、Ile)濃度は0,3hとも0g/dから12g/dにかけて直線的に減少したが、12g/dとの間には差がなかった。その結果、Met単独でも有害作用が生じること、および「BCAAとの拮抗」と「毒性」とは異なることが示唆された。
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