本研究は、1)Met過剰による有害作用の確認、2)DL-Metの安全量と有害量の把握、3)MetとBCAA(およびPhe)間の拮抗的相互作用の確認、4)MetとBCAA(およびPhe)間の拮抗的相互作用の原因、5)Met過剰による有害作用と拮抗的相互作用との関連の有無の解明、などを目的とした。 その結果、次のような結論を得た: 1.子牛の第四胃内へのDL-Met過剰投与の有害性が証明された。 2.6-7週齢子牛におけるDL-Metの安全量の上限は6g/d(0.088g/kg体重)〜12g/d(0.177g/kg体重)の間、毒性量の下限は12g/d(0.177g/kg体重)〜18g/d(0.265g/kg体重)の間で、その中間ではインバランスが生じた。 3.12-13週齢子牛におけるDL-Metの安全量の上限は8g/d(0.079g/kg体重)〜16g/d(0.158g/kg体重)の間、毒性量の下限は24g/d(0.237g/kg体重)〜32g/d(0.316g/kg体重)の間で、その中間ではインバランスが生じた。 4.12週齢より7週齢の方が毒性は生じやすいが、インバランス発生限界については大差がなかった。 5.Met、側鎖アミノ酸(BCAA)およびPhe間に拮抗的な相互作用が確認された。 6.その相互作用は7週齢より12週齢で顕著で、12週齢ではDL-Met0〜32g/dの範囲で認められたが、7週齢ではおおむね0〜12g/dの範囲でのみ認められた。 7.その相互作用はMet、BCAA、Phe間の吸収拮抗によるものではなかった。 8.血漿BCAAおよびPhe濃度の減少は、血漿Met濃度の増加よりも血漿シスタチオニン濃度の増加に対応していた。 9.したがって、その相互作用は硫黄転移経路によるMet代謝に関連することが示唆された。 10.その拮抗的相互作用は、毒性とは無関係であるが、インバランスとの関連については否定できなかった。
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