湖沼や内海等の閉鎖水域系で問題になっている富栄養化現象は、水域周辺から流入する窒素、リン、カリウム等の栄養塩類に起因すると言われている。家畜糞尿はこれら栄養塩類の大きな発生源であり、糞尿総量の軽減だけでなく、各種成分排出量の軽減も要求されている。家畜糞尿中の窒素・リン量を減らすために、単体アミノ酸添加低タンパク質飼料の開発、飼料中フィチン酸分解を目的としたフィターゼ酵素の利用研究がすすめられている。本研究では、低タンパク質・低リン飼料への単体アミノ酸・フィターゼの同時添加が、窒素およびリンの利用性と排泄量に及ぼす影響を、ブタとニワトリを用いた出納試験によって検討した。 育成および肥育前期のブタでは、粗タンパク質14%、総リン0.4%の飼料にリジン、トレオニン、フィターゼを添加すると、粗タンパク質16.8%、総リン0.6%の飼料と同程度の窒素、リン保有量を維持した上で、排泄量は窒素で約25%、リンで約50%軽減できた。 また、ニワトリ(ブロイラー前期)では、粗タンパク質16.3%、総リン0.48%の飼料に不足するアミノ酸とフィターゼを添加すると、粗タンパク質20.5%、総リン0.64%の飼料と同程度の生産性を維持した上で、排泄量は窒素で約47%、リンで約45%軽減できた。 以上の結果から、飼料への単体アミノ酸とフィターゼの併用は家畜生産現場からの環境負荷物質(N、P)の軽減に有効であることが示唆された。
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