研究概要 |
肝臓は旺盛な再生力を持ち、例えばラット肝臓を70%部分切除しても5日後にはほぼ元の大きさに戻る。このとき肝実質細胞のみならず非実質細胞が再生することが肝機能回復に重要である。これまでにVEGF-AおよびVEGF-Bの肝臓および他の臓器での発現と肝再生時の変動についてノーザンブロッティング法で調べた。その結果、肝臓のVEGF-Aの発現は偽手術群においても認められ、再生肝に特有の現象では無いことが明かとなった。VEGF-Aと相乗作用を示すbasic fibroblast growth factor(bFGF)の発現についてノーザンブロッティング法およびRT-PCRで調べたところ、肝切除群3よび偽手術詳のいずれの肝臓においでもbFGFの発現もほとんど変化しなかった。次に、肝臓以外の臓器で発現するVEGF-AおよびVEGF-Bのスプライシングバリアントについて検討した。VEGF-Bのスプライシングバリアントは調べた全ての組織で変化は無かった。VEGF-Aのスプライシングバリアントも手術による影響は見られず、心臓では主に189bpのバンドが検出され、肺および脾臓では少なくとも189,165,121bpの三つのバンドが検出された。これらの結果より、非実質細胞が再生にはbFGFの関与は少なく、肝臓でのVEGF-Aの発現と他の臓器、特に血中に放出しうるl21bpのVEGF-Aを産生する肺や脾臓の関与が示唆された。しかしながら、これらも肝切除群と偽手術群においても同様に認められることから、別の非実質細胞再生の機構が存在すると考えられる。
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