研究概要 |
本研究の目的は、日本で発生した羊スクレイピ-の病原体の多様性を、1)スクレイピ-羊に蓄積するPrPScの生化学的症状、および2)実験動物への伝達性、から検討することである。またPrP以外の因子がスクレイピ-病原体の多様性に関与する可能性も検討課題である。 日本で発生した羊スクレイピ-8例と、実験感染羊3例の合計11例のスクレイピ-感染羊の各々の脳内に存在するPrPScの生化学性状を蛋白質分解酵素(Proteinase K[PK])に対する抵抗性を指標に検討した。PK濃度40μg/m1,2時間の処理で分解されるPK易感受性のPrPScが蓄積している羊と、同処理で分解されないPK強抵抗性のPrPScが蓄積している羊が存在することが判明した。この結果はPrPScの生化学性状を指標とすると、日本の羊には少なくとも2種類のスクレイピ-病原体が存在する可能性を示唆している。次に上記11例の羊の10%脳乳剤をPrP遺伝子型の異なる2系統のマウスに接種し、伝達性および病変の出現部位に違いがあるか否かを検討した。実験感染羊の2例(固体番号A1,B3)を接種したマウスは、229±12日、236±14日で死亡した。その他は現在経過観察中である。マウスに伝達できた2例については、発症したマウスの脳の乳剤を新たなマウスに接種し経過を観察している。 クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)では、アポリポプロテイン(ApoE)遺伝子型とCJD発症の関連が示唆されている。そこで、羊ApoE遺伝子をクローニングして、同遺伝子の多型を調査するとともに、多型の出現頻度をスクレイピ-羊郡および健康羊郡の間で比較したが、統計学的に有意な差は確認されなかった。この結果は現在印刷中である。
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