研究課題/領域番号 |
09660312
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
松井 高峯 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (40111116)
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研究分担者 |
牧野 壮一 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教授 (30181621)
石黒 直隆 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教授 (00109521)
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キーワード | スクレイピー / プリオン / 伝達性海綿状脳症 / 狂牛病 |
研究概要 |
羊のスクレイピー、牛の海綿状脳症(BSE)に代表される伝達性海綿状脳症(プリオン病)の病原体(プリオン)は病原体特異的な核酸を持たないことから、遺伝子型別および抗原型別は病原体型別には応用できない。しかしプリオンは生物学的性状あるいは生化学的性状によりある程度区別可能である。そこで本研究では、日本の羊スクレイピーの病原体に多様性("株")が存在するか否かを明らかにするための一連の実験を行なった。我が国で過去10年間に日本で発生した羊スクレイピーの11例を選抜し、マウスに接種して伝達性と羊脳内に蓄積したPrP^<Sc>の蛋白質分解処理抵抗性を調べた。マウスヘの伝達性では、伝達可能なものはその潜伏期から2群に区別され、さらに伝達不可能なものを含めると、計3群に分類された。またPrP^<Sc>の蛋白質分解処理抵抗性の程度の差から,羊スクレイピーは2群に分類された。最終的に、今回使用した生物性状および生化学性状から総合的に判断すると、11例のスクレイピーは3群に分類された。つまり日本には複数のスクレイピー病原体が存在することが明らかとなった。本研究のように多数の羊スクレイピーの性状を詳細に比較検討した研究は英国で報告があるのみで、日本では初めての例である。本研究で得られた成績は、日本に存在するスクレイピー病原体が動物種を越えて牛や人間に感染する危険性を評価するための重要な知見となる。次に、マウスヘ伝達した羊スクレイピーを株化するためにマウスで連続継代を行なった。潜伏期が非常に長いことから、一部の感染実験は現在経過観察中であるが、初代伝達時では生物性状および生化学性状に差が認められた例でも、マウスで継代を重ねるとマウスに馴化した株に収束する傾向があり、現時点では、マウスに馴化した性状の異なる複数の株を樹立することには成功していない。
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