本年度は、開発した方法を用いて、他の血管内皮細胞で応用が可能かどうか検討を行った。開発した動脈内皮細胞の高分子輸送経路の検出法は、内皮細胞を固定後、トレーサー(HRP)を灌流する方法で、(1)細胞内の高分子輸送経路であるカベオラ-小胞性チャンネルはトレーサー陽性の基底側のカベオラとして、(2)細胞間の高分子輸送経路である細胞間チャンネルは全域がトレーサー陽性の細胞間隙として検出する方法である。 本方法は、外腸骨動脈(中間型動脈)、伏在動脈(筋型動脈)、大動脈外膜の小動脈、冠状動脈(筋型動脈)、心臓の小・細動脈と毛細血管ならびに小・細静脈、冠状静脈など、実験対象としたすべての血管内皮細胞に応用することができた。応用するためには、固定液ならびにトレーサー溶液の灌流速度(灌流圧力)を制御することが必要であった。高い流速では、トレーサーがしばしば細胞質に流入した。これは、固定させている内皮細胞の細胞膜が硬くてもろい状態であると推測できるため、細胞膜に亀裂が入り起こるのであろうと考えられた。カベオラ-小胞性チャンネルならびに細胞間チャンネルは対象としたすべての血管内皮細胞で認められたため、両チャンネルは、少なくとも連続性内皮細胞すべてに認められる高分子の輸送経路であることが明らかとなった。従って、本研究で開発した方法は、体の分布する大部分の血管内皮細胞の高分子輸送経路の検出法として利用でき、形態計測学的解析を加えることで血管内皮細胞の高分子透過性状を把握できることが示された。
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