動脈硬化の実験系には、動物モデルを用いたin vivo系および培養細胞を用いたin vitro系の2つがある。本研究は、培養細胞を用いた試験管内での反応から生体内病変を推測することは困難であるとの観点から、動物モデル実験系のように組織構築の変化を形態学的に据えることができ、しかも培養細胞実験系のように特定の因子を選択して適用できる実験モデルを確立すること、さらにこの系を利用して動脈硬化に関与する因子の作用を検討することを目的として行われた。 本年度は、以下の3つの観点から研究を行い、成果を上げることができた。 1)インターロイキン1βの器官培養系で作用:誘導型一酸化窒素合成酵素を誘導することが知られているインターロイキン1βの作用を器官培養系で再現することに成功した。インターロイキン1βは一酸化窒素合成酵素の誘導だけでなく、Kチャネルの活性を上げ細胞膜を過分極させることも明らかにした。 2)血小板活性化因子の血管内皮細胞に対する作用:器官培養により血管内皮からの一酸化窒素遊離を減弱させること、さらにこの作用が構成型一酸化窒素合成酵素の転写レベルでの抑制に基づくことを明らかにした。(論文投稿中) 3)血小板活性化因子の血管平滑筋に対する作用:器官培養により平滑筋の収縮性を減弱させること、この作用が平滑筋細胞の収縮型から増殖型への形質転換であることを明らかにした。(論文作成中)
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