研究概要 |
本研究は、培養細胞を用いた試験管内での反応から生体内病変を推測することは困難であるとの観点から、動物モデル実験系のように組織構築の変化を形態学的に捉えることができ、しかも培養細胞実験系のように特定の因子を選択して適用できる実験モデルを確立すること目的として行われた。 平成9,10年度、2カ年の研究により、以下の成果をあげることができた。 1) 誘導型一酸化窒素合成酵素を誘導することが知られているインターロイキン1βの作用を器官培養系で再現することに成功し論文として公表することが出来た(Eur.J.Pharmacol.330,143-150,1997)。さらに、インターロイキン1βの作用が一酸化窒素合成酵素の誘導だけでなく、Kチャネルの活性を上げ細胞膜を過分極させること、さらにこの作用がATP感受性のKチャネルの活性化を介することを明らかにした(J.Vet.Med.Sci.In press.1999)。 2) ウシ胎児血清の血管内皮機能に対する作用を検討した。器官培養により一酸化窒素遊離を減弱させること、これがNO合成酵素発現(mRNA)レベルで起こっていることも明らかにした(Eur.J.Pharmacol.In press 1999)。 3) 血小板活性化因子(PDGF)の血管内皮細胞に対する作用を器官培養法により検討し、血管内皮からの一酸化窒素遊離を減弱させること、さらにこの作用が構成型一酸化窒素合成酵素の転写レベルでの抑制に基づくことを明らかにした。(論文投稿中) 4) ウシ胎児血清の血管平滑筋に対する作用を検討した。器官培養により平滑筋の収縮性を減弱させること、この作用が平滑筋細胞の収縮型から増殖型への形質転換であることを明らかにし、臨床例で見られる中膜の増殖性病変と酷似していることを明らかにした。(論文作成中)
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