抗酸菌感染におけるマウスの抵抗性は、第1染色体上に存在する優性対立遺伝子Nramp-1により支配されている。同遺伝子がコードするタンパクNRAMPはマクロファージに特異的な膜輸送機能を果たしていると考えられているが、本質的なことはいまだ解明されていない。我々は抵抗性のDBA/2マウスから感受性C57BL/6マウス(Bcg^s)へNramp-1を移入しコンジェニックマウスc57BL/6(Bcg^r)を作成、Nramp-1cDNAの塩基配列を調べるとともに、mRNAの発現を比較した。cDNAの塩基配列は、596番目の塩基を除いていずれの系統とも同じであった。596番目のそれはBcg^rマウスでG、Bcg^sマウスではAであった。mRNAは、脾・肝・肺でその発現が認められ、Bcg^sBcg^r両マウス間に違いはみられなかった。現在、同遺伝子を発現ベクターに組み込み、動物(ラット、ウサギ)に免疫して抗NRAMP抗体が得られないかどうかを検討中である。つぎにNRAMPによる防御機構に及ぼすステロイド剤の影響を調べる目的でBcg^sとBcg^r両マウスにM.aviumを静脈接種し、ステロイド剤を投与したところBcg^sBcg^r両マウスともに脾臓重量の減少と脾臓と肝臓の臓器内菌数の増加がみられた。また骨髄由来マクロファージにin vitorでM.aviumを感染させ、同細胞をコルチコステロンで処理するとNramp-1遺伝子発現がわずかに抑制された。一方マクロファージ内における菌の増減には影響しないことが分かった。マクロファージから産生されるTNFα量はBcg^sBcg^rともにコルチコステロンにより有意に抑制されたことから同物質の免疫調節への関心を強く伺わせた。またファゴソーム・ライソゾーム融合阻害実験の結果はNramp-1遺伝子の膜融合への関与の可能性を否定的なものにした。
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